京都地方裁判所 昭和39年(ワ)1244号 判決 1965年10月19日
原告 朴再洪
右訴訟代理人弁護士 上田信雄
被告 三洋工業建設株式会社
右代表者代表取締役 蓑田正敏
主文
被告は原告に対し金五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年一二月一八日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。
原告その余の請求を棄却する。
訴訟費用は二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
本判決第一項は仮りに執行できる。
事実
原告は、「被告は原告に対し金一、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和三九年一二月一八日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因として、
「一 原告は、現に、被告が拒絶証書作成義務免除の上裏書した左記(1)、(2)の約束手形二通の所持人である。
(1)金額 金五〇〇、〇〇〇円
支払期日 昭和三九年三月二〇日
支払地、振出地 大阪市
支払場所 株式会社三和銀行心斉橋支店
振出日 昭和三八年一二月三日
振出人 英和石油株式会社
受取人 被告
第一裏書裏書人 被告
第一裏書被裏書人 原告
(2)金額 金五〇〇、〇〇〇円
支払期日 昭和三九年四月一一日
振出日 昭和三八年一二月三日
その他の記載(1)と同じ
二 原告は、(1)の手形を支払期日の翌日に、振出日未補充の(2)の手形を支払期日に、支払場所に呈示して支払を求めたが、支払を拒絶された。
三 原告は、昭和三九年六月一五日、(2)の手形の振出日を昭和三八年一二月三日と補充した。
四 よって、原告は、被告に対し、(1)、(2)の手形金合計金一、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和三九年一二月一八日から支払済まで年六分の割合による損害金の支払を求める。」
と述べた。
被告は、口頭弁論期日に出頭せず、本案の答弁を記載した答弁書その他の準備書面も提出しない。
理由
原告主張の事実は、被告において自白したものとみなされる。本件のように、訴状、答弁書催告状、第一回口頭弁論期日呼出状が被告に交付送達された場合、訴状(および原告提出の準備書面)が陳述された口頭弁論期日の呼出状が被告に公示送達されたときでも、原告の主張した事実が、訴状記載の事実と訴状に記載されていない被告に利益な事実とであるときは、民事訴訟法第一四〇条第三項但書の適用なく、原告の主張した事実は、被告において自白したものとみなされる、と解するのが相当である。
確定日払約束手形においても、振出日の記載は手形要件であり振出日の記載を欠いた約束手形は有効な手形ではない(手形法第七五条、第七六条)。
したがって、振出日未補充の約束手形による支払のための呈示は無効であり、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡って有効になるものではない。
それゆえ、原告が(2)の手形について振出日未補充のまま支払期日にした呈示は、被告に対する遡求権を保全する効力を有しないから、原告の被告に対する(2)の手形金請求は失当である。
よって、原告の本訴請求は、(1)の手形金五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する訴状送達の日の翌日であること記録上明かな昭和三九年一二月一八日から支払済まで年六分の割合による損害金の支払を求める限度において、正当として認容し、その余の請求を失当として棄却し、民事訴訟法第九二条、第一九六条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 小西勝)